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肺の腫瘍。

  • Posted by: doubutsuendouri stuff
  • 2012年8月 5日 15:23

昨日から元気がなく、のどに何か詰まったような咳をするとのことで、11歳のラブラドールの子が連れて来られました。

呼吸が荒く、熱が40度をこえていました。

血液検査では、白血球の軽度上昇、グロブリン(炎症性のタンパク)が軽度上昇している以外は大きな異常はありません。


レントゲン写真では、左肺後葉に7×9cm大の腫瘤が見受けられます。

RIMG0059.JPG

RIMG0060.JPGこのできものだけでは症状がでないことも多いのですが、その周りに肺炎を起こしていることを考え内服にて治療しました。


症状はよくなりましたので、再度レントゲン写真をとります。

RIMG0057.JPG

RIMG0056.JPG

RIMG0058.JPG



以前より小さくなっていますが、同じ場所にできものが写っています。おそらく腫瘤の周りの炎症がひいて以前よりくっきりとした陰影でみえるのでしょう。

肺の腺癌は、一葉に腫瘍が限局していて肺のリンパ節への転移がなければ外科切除により抗がん剤の使用なく一年前後生存可能という報告があります。

肺野のできものが単一であること、リンパ節の転移はレントゲン検査上見つからないことから、摘出手術をすることになりました。

わんちゃんの肺は左が前葉と後葉の二つに分かれ、右肺は、前葉、中葉、後葉、副葉の4つに分かれます。できものをとるときはその肺葉ごととります。

この子の場合は左肺後葉を摘出することになります。

下のContinue readingをクリックすると手術中の写真がでますので苦手な方はご注意ください。

大丈夫な方はおすすみ下さい。



手術部位を消毒していきます。

DSC00178.JPG

光が当たっているところが膨らんでいますが、これは胸壁(肋骨の外側で皮膚の下)にある脂肪腫です。

切開すると、その大きな脂肪腫が見えてきます。

DSC00179.JPGこれも手術のついでに取ってしまいます。

この子は左の後葉に腫瘤がありますので左第5肋間開胸術を行います。

広背筋を切開して、目的の肋間を確認します。


開けるべき肋間を確認したのちその真ん中で胸膜(肺の外表面と胸壁の内面を覆う膜)を切開します。このとき麻酔師に呼吸を一時的に止めてもらいます。

DSC00184.JPG

真ん中の膜の向こうに見えるのが肺です。


それぞれの肋骨の後ろ側には血管と神経が分布していますので傷つけないように細心の注意を払いながら切っていきます。


肺の後葉は胸膜に一部癒着しているのでそれを丁寧に剥がして胸壁の外に出してきます。親指のところにあるのが腫瘍です。

RIMG0040.JPG

このあと動脈、静脈、気管の順番で結紮していきます。この子のサイズだとかなり血管も大きいです。丁寧に慎重に結紮していきます。一つ間違うと大量出血になり命の危険があります。

この操作のときも術者と麻酔師の息を合わせなくてはなりません。麻酔師をしてくれた畠山先生の存在は大きいです。

RIMG0042.JPG

肺のリンパ節が膨らんでいないことを確認して閉胸していきます。

術後の疼痛緩和を考えて胸膜に局所麻酔のブピバカインを注射していきます。

RIMG0044.JPG


手術を無事に終えて胸をなでおろします。

後日病理検査の結果は「気管支腺癌」でした。

術後経過は臓器内転移や胸腔内転移について慎重に見ていってあげる必要があるものの外科的摘出により予後はいいことが多いですよとのことです。

他の手術よりは入院日数が長くなってしまいましたが、元気に退院していってくれました。その後ろ姿を笑顔で見送ることができました。

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